2012年10月10日
肥満細胞腫
最近、立て続けにワンちゃんの肥満細胞腫に遭遇しています。
肥満細胞腫とは、
肥満細胞という細胞が腫瘍化してしまったものです。
もともと体の色んなところに肥満細胞は存在しているのですが、
それが何らかのきっかけで異常増殖してしまいます。
皮膚に発生する場合や、内臓に発生する場合もあります。
ワンちゃんでも猫ちゃんでもこの肥満細胞腫は非常に多く、
皮膚に発生する腫瘍の中で、20%ほどがこの肥満細胞腫だとも言われます。
基本的には悪性腫瘍ですが、
高分化型と言って悪性腫瘍でも比較的穏やかなタイプや、
アレルギーなどの炎症に伴って出現したのかな!?、と思うようなこともあります。
高分化型の場合は何か月、場合によっては年単位で皮膚に肥満細胞腫があるけど、
大きくならない、といったこともありますが、
低分化型というものであれば、早い段階で転移することもあります。
また犬種的には
ラブラドール・レトリバーやシュナウザー、ビーグル
などに多いというデータがありますが、
日本ではとくにパグの子でよく見かけます。
皮膚にできた肥満細胞腫は、
細い針を刺して取れたものを顕微鏡で調べることにより、
容易に診断できることも多い腫瘍です。
顕微鏡で見ると、細胞の中に顆粒がいっぱい見えることが特徴です。
赤い線の内側(薄い紫の部分)が細胞、
黄色い線の内側(濃い紫の部分)が細胞の核、
黄色の線の外側で赤い線の内側が細胞質という部分ですが、
この細胞質内に赤紫の顆粒が存在します。
この写真だと顆粒まではわかりませんが、
なんとなくざらついて見えるかと思います。
このざらついた感じが顆粒なんですね。
肥満細胞腫の治療には、手術や抗がん剤・ステロイド剤などがありますが、
転移がなく皮膚に1つ肥満細胞腫がある場合には、手術での切除が治療の中心になります。
こちらの写真はラブラドール・レトリバーの子ですが、
太ももの裏側に7~8cm程の肥満細胞腫ができてしまいましたので、
手術で取りました。
デキモノは小さなうちに治療したほうが理想的ですので、
もし自宅でワンちゃん・ネコちゃんの体にデキモノがあることに気づいたら、
すぐに主治医の先生に診てもらって下さいね。
なお、もしデキモノがあって肥満細胞腫だと診断がついたら、
そのデキモノにはあまり触らないで下さい。
肥満細胞の顆粒の中には、ヒスタミンという物質が含まれています。
時には触ることによりこのヒスタミンが流れ出てしまうことがあるからです。
この物質は胃を荒らしてしまい、吐き気が出たり胃潰瘍を引き起こしたりします。
(CMでよく見かけるかもしれませんが、ガスターという薬があります。
この薬は胃酸の出過ぎを抑える薬で、H2ブロッカーと呼ばれますが、
実はこのHとは、ヒスタミンのHです。
ヒスタミンが出過ぎてしまうと胃が荒れてしまうんですね)
最後に、時々質問を受けるのが、
「肥満細胞腫っていうことは、うちの子が肥満だからなってしまったんですか?」
という質問です。
これは全く関係ありません。
顕微鏡で見ると、肥満細胞はほかの細胞と比べ
顆粒をたくさん持っていることにより、丸く太って見えるため、
細胞が肥満のように見える、というだけのことです。
決して体全体の肥満とは関係ありませんよ。
痩せている子でも、発生することのある腫瘍です。