2013年08月30日
股関節の脱臼
ずいぶん病気や怪我のお話について間が空いてしまいました・・・。
今回は股関節の脱臼の猫ちゃん・ワンちゃんのお話をさせて頂きます。
股関節は皆さんご存知の通り、足の付け根の関節です。
本来は骨盤の窪み(寛骨臼といいます)に、
太ももの骨の丸い頭の部分がはまっています。
下の写真は正常なレントゲン写真ですが、
写真の向かって右側の黄色の部分が太ももの骨の頭(大腿骨頭)、
赤い部分が骨盤の窪み(寛骨臼)です。
色付けしていない左側の部分と照らし合わせて見て頂くとわかりやすいかもしれません。
しかしこれが何らかの原因で外れてしまうことがあります(股関節脱臼)。
原因は様々ですが、猫ちゃんですと交通事故や高所からの落下などが多く、
またワンちゃんですと
交通事故や落下だけでなく、数十センチの高さから落ちただけでも、
足の着き方が悪いと外れてしまうことがあります。
脱臼すると、通常はものすごく痛がり、足を全く着地できなくなります。
骨折をしたかも知れない、といって病院へ来られる方もいますが、
骨折ではなく脱臼だったということもよくあるケースです。
股関節の脱臼だけの場合、
整復することにより痛みと症状が劇的に改善することがあります。
しかし脱臼の整復はものすご~く痛くて動物にとって苦痛です。
整復だけでなく、痛くて痛くてレントゲン撮影もできない子もいます。
ですので、脱臼の整復は麻酔をかけて行いますし、
場合によってはレントゲン撮影も麻酔をかけて行う場合があります。
整復は麻酔をかけた後、足を動かすことにより股関節をはめますが、
うまく整復できない場合や、整復してもすぐに脱臼してしまう場合には、
手術が必要になることもあります。
人間でも脱臼は癖になるといいますが、動物でも同じです。
関節を固定している靭帯や筋肉・腱などが脱臼により損傷してしまうため、
一旦脱臼してしまうと、再発しやすくなってしまうんですね。
また動物の場合は人間よりも安静が難しいので、
それも再脱臼する原因の一つです。
次の写真は猫ちゃんのレントゲン写真です。
外に行く猫ちゃんで、近所のパトロールから帰ってきたら、
足を着けず痛そうにして動けなかったそうです。
それでも痛い足で何とかお家まで頑張って帰ってきてくれたんですね。
向かって左側の股関節(黄色のマル)が
外れてしまっていることがわかりますでしょうか?
右側は問題なくはまっています(赤マル)。
この子は身体検査とレントゲン検査で股関節脱臼と診断した後、
全身麻酔をかけて整復を行いました。
整復は比較的容易にでき、整復後のレントゲン写真がこちら。
しっかりと骨盤の窪みに太ももの骨の頭がはまっています。
この子はその後飼い主さんの努力もあり、
しっかり安静ができましたので、
現在は再発もなく元気にしています。
こちらはワンちゃんのレントゲン写真です。
向かって右側の股関節(黄色のマル)が外れてしまっています。
左側の赤マルの方はしっかりはまっています。
この子は自宅で急に痛そうに鳴く様子があったので見に行ってみると、
足を着けなくなっていたそうです。
何があったかは不明ですが、身体がとっても小さな子でしたので、
ちょっとしたことで外れてしまったのかもしれません。
猫ちゃんと同じように麻酔をかけて股関節の整復を行ったのですが、
この子の場合整復してもすぐに外れてしまうため、
結果的には手術(骨頭切除術)を行いました。
現在は滑りやすい場所に行くと足を挙げて歩くこともあるそうですが、
普段はしっかり足を着けて歩いたり走ったりもできています。
ちなみに手術は太ももの骨の頭を切除する手術になります。
脱臼したままだと、
骨と骨がぶつかり合ってものすごく痛いのですが、
骨を切除することにより骨と骨がぶつかり合う痛みが無くなって、
徐々に歩けるようになっていきます。
また、骨を切除しても偽関節と言いますが、
筋肉などで関節のあった部位が支えられるようになってきて、
中型犬以下の体重であれば、日常生活には困らないようになります。
もうすぐ食欲の秋・運動の秋です。
やんちゃし過ぎて、怪我をしないように注意してあげて下さいね。
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