2019年07月01日

リンパ腫

リンパ腫はリンパ球という体の中の免疫細胞が腫瘍化したもので、

身体の中のどこにでも発生しうる腫瘍です。

とくに身体のリンパ節や脾臓・腎臓・消化管に発生することが多く、

猫では鼻の中のリンパ腫も少なくありません。

その他に当院では背骨や心臓に発生したリンパ腫も診断・治療をしています。

また、リンパ腫が1カ所だけ確認できたとしても、

その時点であちこちにリンパ腫の細胞が流れてしまっている状態であることが多く、

外科手術などの局所的な治療方法はあまり行われず、

抗がん剤などの全身療法で治療される場合がほとんどです。

積極的な治療をしない場合、

犬の多中心型リンパ腫であれば、生存期間は約 1ヶ月が平均的といわれています。

皮膚のリンパ腫はゆっくり進行していくこともありますが、皮膚のかゆみや痛みに悩まされることが一般的です。

消化器に発生したリンパ腫では嘔吐や下痢などの症状が出て、体調不良が急速に進行していきます。


リンパ腫の細胞診検査画像
リンパ腫の細胞診画像 


<診断>

細胞診検査で診断を行うことが一般的です。

身体の表面のリンパ節や皮膚が腫れている場合には、

その部位に細い針を刺して細胞を採取して確認します(細胞診検査)。

内臓に出来ている場合には、身体検査・レントゲン検査や超音波検査などで

腫瘍が疑われる部位を発見し、その部位に細い針を刺して細胞診検査を行います。

まれに細胞診検査だけでは診断がつかないことがあり、

その場合には、麻酔をかけて組織を採取して調べる病理組織検査が必要になることもあります。

また、脳や脊髄に発生することもありますが、この場合には診断が困難になることもあります。


リンパ腫が腎臓に出来て、腎臓が腫れている猫のレントゲン画像(赤丸の部分が腎臓)
リンパ腫リンパ腫 

脾臓にリンパ腫ができた犬の超音波検査画像
リンパ腫

心臓に発生したリンパ腫の画像。
右心房という部位がとくに腫れています
(赤丸の中の白くなっている部位が右心房のリンパ腫)
リンパ腫リンパ腫 

LGLリンパ腫という特殊なタイプのリンパ腫
LGLリンパ腫

モット細胞型リンパ腫という、非常に珍しいタイプのリンパ腫
モット細胞(mott cell)型リンパ腫



<治療>

上述の通り、抗癌剤治療が一般的です。

抗癌剤治療の効果と副作用は比例する面もあり、

強めに薬を使えば抗がん剤治療の効果は出やすい反面、副作用も出やすくなります。

抗癌剤を弱めに使えば副作用は弱まりますが、腫瘍を抑える効果も弱くなります。

最近では副作用を抑えるいい薬も増えてきていますので、

ほとんど副作用が出ない子もいます。

また、腸の一部にリンパ腫ができている場合には、手術で腸の部分的な切除を行うこともありますし、

鼻のリンパ腫の場合には、放射線治療を行うこともありますが、

静岡の場合、立地的に放射線治療が難しくなってしまいます。


<当院での治療>

当院ではリンパ腫に対する抗がん剤治療を積極的に行っており、

同時に副作用軽減のため、嘔吐止めや下痢止め・整腸剤などの処方を行い、

極力副作用を軽くする、もしくは出なくなるように努力しています。

抗がん剤投与だけではなく、

自宅でのケア・看護や抗がん剤投与後の起こりうる体調不良や異常の判断の仕方などの説明にも力を入れています。

食欲がない場合には少しでも食べやすいような食事の提案をできるように、

様々な種類の栄養食を準備して、

またチューブを使った栄養・投薬方法も提案できるようにしています。

もちろん、積極的な抗癌剤治療だけではなく、

弱めの抗がん剤治療を行う場合や、抗癌剤治療を行わない場合などでも、

それに対してできうる限りの対応をしていきます。

これまでに、多中心型リンパ腫(体のあちこちのリンパ節が腫れてしまうタイプ)、

脾臓のリンパ腫、腎臓のリンパ腫、消化管のリンパ腫、

鼻のリンパ腫、ノドのリンパ腫、心臓のリンパ腫、肺のリンパ腫、皮膚のリンパ腫、

背骨・脊髄のリンパ腫、モット細胞型リンパ腫(mott cell lymphoma)やLGLリンパ腫などの診断・治療を行ってきています。

フェレット・ウサギ・ハムスターのリンパ腫も診断・治療を行っています。


鼻の奥(咽頭)に発生したリンパ腫の治療前(左)と初回治療後(右)
咽頭リンパ腫  咽頭リンパ腫治療後


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