2012年09月18日
尿路結石
尿の通り道は腎臓→尿管→膀胱→尿道となりますので、
腎臓に結石ができれば腎結石、膀胱にできれば膀胱結石になります。
また尿管や尿道には結石そのものはできにくいですが、
腎臓や膀胱からの結石が流れてきて、
尿管や尿道に詰まってしまうことがあります。
尿管に結石が詰まれば尿管結石、尿道に結石が詰まれば尿道結石といいます。
尿道や尿管が詰まってしまうと大変です。おしっこが出なくなってしまいます。
おしっこは毒素や老廃物を体外へ出すための大事なものですので、
おしっこが出ないと、毒素が体内にたまり、ひどいと尿毒症という、命にかかわる事態になります。
14歳のシュナウザー君、血尿が出てから、おしっこがぽたぽた漏れる様子があり、
腰が立たなくなってしまったということで来院しました。
過去に2回、膀胱結石を取る手術をしているそうです。
今までは膀胱結石が1個ずつだったそうですが、
今回は調べたところ、たくさんの膀胱結石と尿道結石がありました。
(白い粒々としたものが結石です。またこの写真ではわかりづらいのですが、腎臓結石もありました)
恐らく以前からあった膀胱結石が、尿道に流れてはまり込んでしまったのでしょう。
そのためおしっこを十分出せない状態になってしまい、尿が少しずつ漏れるようになってしまったのです。
また痛みも加わり立てなくなってしまったのでしょう。
幸い、尿毒症にまでは至っていませんでした。
治療として、まずおちんちんの先からカテーテル(軟らかい管)を入れて、
その先端を尿道結石の手前まで持っていき、
カテーテルを通して水圧をかけて、尿道の結石を膀胱まで押し戻します。
がっちりと尿道にはまっていたためやや苦労しましたが、
なんとか結石を膀胱まで押し戻すことに成功しました。
その後のレントゲン写真がこちら↓
さっきまで見えていた尿道結石がなくなっています。
もちろん膀胱内に結石があることには変わりませんが、
ひとまずこれで尿は出るようになり、痛みも少なくなります。
膀胱結石の場合、治療法は
①手術で膀胱内の結石をとる (外科的治療)
②食事で溶かしたり管理できる結石であれば、食事療法をする (内科的治療)
に分かれます。
また①の手術の場合、男の子限定ですが、今後尿道に結石が詰まりにくくなるように、
尿道を太く短くする手術(会陰尿道造瘻術:えいんにょうどうぞうろうじゅつ)
を一緒に行うこともあります。
②の内科的な治療は負担は少ないのですが、
溶けない結石や大きな結石などではうまくいきません。
このシュナウザー君の場合、
14歳と高齢ですし、飼い主さんとしては麻酔や手術は避けたいのが当然ですよね。
しかし膀胱結石がとてもたくさんあるため、またすぐに尿道に詰まってしまう可能性や、
結石がうまく溶けたとしても非常に時間がかかり、
その間にもやはり尿道に詰まってしまうことを何回も繰り返すだろうということを考えて、
飼い主の方と相談の上、膀胱結石だけ取る手術を行うことになりました。
(実際、手術までの2~3日間は調子が良かったのですが、
手術当日にまた尿道に詰まった状態になってしまいました)
手術は麻酔の量を少しでも減らすため、
また体への負担を少しでも減らすため、
何種類かの鎮静剤や鎮痛剤を組み合わせて、
麻酔の量を減らしながら行いました。
慎重に麻酔をかけて、手術開始。おちんちんの横を切り、お腹をあけます。
そしてお腹を開けたら、膀胱を確認。
膀胱を体外へ少し引っ張り出し、膀胱に切開を加え、結石を取り出します。
膀胱を体外へ引っ張り出した様子です↓
結石の取り残しがないことを確認してから、膀胱をきれいに縫い、
おなかを閉じて手術終了。
ところで膀胱に限らずですが、縫うときはその間隔が重要です。
膀胱の切開した部位から尿が漏れては大変ですので、
縫う間隔を狭くして、きつく縫う印象を持つかもしれませんが、
そうすると血液の流れが悪くなるため傷口がくっつきません。
しかしあまりに間隔をあけて縫いすぎても当然だめです。
適度に間隔をあけて、血液の流れを邪魔しないようにしないといけません。
傷口を治すためには血行が重要です。
話が少し逸れましたが、
摘出した膀胱結石の写真です。
その数、大小合わせ130個以上!!
(途中まで数えていたのですが、小さいものもたくさんあり、
数えきれなくなりました・・・)
手術翌日は体調が悪そうな様子もあったのですが、
翌日の夜には食欲旺盛に。
(もともと大食漢だそうです)
手術後4日間ほど入院しましたが、
今は退院して自宅で落ち着いて過ごしていますが、
まだ手術後のケアと結石予防の治療を行っていかなくてはなりません。
膀胱結石はある程度予防できる面もありますので、
今後はそちらの話もさせて頂きますね。